大麻は、カンナビス、マリファナ、WEEDなど様々な名前で呼ばれています。
原産地は中央アジアと言われており、現在では世界の各所に生息しています。アサ科アサ属に分類されます。一年草で、約110日間で2~4mまで成長します。大麻農家では、通常3月末~4月初頭にかけ種をまき、7月中旬~8月初旬にかけて収穫します。大麻の栽培には、多湿で適度に暖かい土地がよいとされているそうです。なお、国内において大麻を取り扱うには、都道府県知事が発行する「大麻取扱者免許」が必要となります。
大麻は雌雄異株で、雌の花穂にはTHCがたくさん含まれています。日本では花穂や葉は違法対象となっており、THC(テトラヒドロカンナビノール 詳しくは「カンナビノイド」で解説)の含まれない茎と種子のみ合法となっています。
大麻は太古の時代から存在する”植物”です。
長い歴史を持っており、実は石器時代より、釣り糸やロープとして用いられてきたと言われています。
そもそも日本では、第二次世界大戦まで、大麻を麻薬として使用するという文化はありませんでした。麻薬としての認識もなく、日本国内には多くの大麻農家が存在していました(現在は、大麻農家の高齢化、需要減などの理由により、30軒ほどしか存在していないそうです)。
そこに突如鉄槌を落としたのが、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)です。 GHQは第二次世界大戦後、一方的に大麻を麻薬として扱い、規制することを日本に要求したのです。当然当時の日本国民、特に大麻農家の方々は納得できないし、失業してしまうので、それに抵抗します。
大麻を禁止しつつ、大麻農家を守る。その間をとるかのようにして成立したのが「大麻取締法」です。
結局GHQが大麻を規制した理由については、アヘンの取り締まりや、自国が推進する石油由来の科学繊維(ナイロン等)を発展させるために大麻産業が邪魔だった、など諸説あります。
つまり、大麻自体何が悪いのか、なぜ規制すべきなのかといった核心をついた理由がないまま、我が国では大麻が厳罰の対象となったのです。
そして現在。世界では大麻の合法化・非犯罪化が進んでいます。 なぜか日本ではそれに逆行するように、大麻使用罪が造設されようとしています。
厚生労働省の「ダメ、絶対」のスローガンのもと、今でも大麻は違法となっています。その理由として以下のことが有名です。
大麻はそもそもソフトドラッグとして扱われています。大麻を使用することで、他のよりハードなドラッグ(覚醒剤など)に手を出してしまう危険性が高まる、というものです。NIDA(アメリカ国立薬物乱用研究所)によると、実際にそれを示唆するデータも存在しますが、直接的ではないそうです。
大麻を違法薬物として扱っている環境だからこそ、その他の違法薬物に手を出しやすい状況ともとれます。違法である大麻を扱うのは違法な人達であり、その他のハードドラッグも取り扱っている場合が多いでしょう。また大麻を所持した時点で法を破っているという事実が、ハードドラッグに手を出すハードルを下げているとも考えられます。つまり、大麻を違法に扱っていること自体が、ゲートウェイになっている可能性もあるのです。合法であるお酒を飲むことでハードドラッグに手をだす、ということはないですもんね。
ある研究データでは、脳が未発達の状態(つまり10代を中心とする若者)が大麻を使用すると、注意力、問題解決能力、IQスコアなどが低下することが示唆されています。これはお酒やたばこと似ていますね。もし仮に大麻を合法化するのであれば、お酒やたばこと同様に、未成年で大麻使用によるデメリットをきちんと教育した上で、年齢制限を設けることが必須となるでしょう。
簡単に言うと、治安が悪くなるという考えですね。お酒も同様ですが、精神に作用することを考えると、節度は大切だと考えられます。
現在大麻の所持が犯罪となっている日本においては、大麻のブラックマーケットは巨大です。大麻の合法化は、こういったブラックマーケットを縮小することにもつながるかもしれません。カルフォルニア州の税務局によると、2009年の医療大麻ビジネスは、カルフォルニア州に1億500万ドルの税収をもたらしたそうです。大麻の合法化は、取り締まりにかかる莫大な費用をなくし、かわりに莫大な税収をもたらしてくれるかもしれません。
大麻にはハイになる作用があるため、その状態で運転したら、飲酒運転同様、当然交通事故は増えます。フランスで行われた研究では、大麻を摂取しない状態での運転を徹底した場合、国内の交通事故を4.2%減らすことができると報告しています。もし合法化するのであれば、大麻使用後の自動車運転を厳しく規制する必要があるでしょう。
依存とは、ある対象がないと生活に大きな支障を及ぼす状態を言います。 大麻には身体依存はないが、精神依存はあると言われます。
医学雑誌LANCETが発表した論文によると、依存物質を依存度の強いものを順に並べると
ニコチン ⇛ ヘロイン ⇛ コカイン ⇛ アルコール ⇛ カフェイン ⇛ 大麻
となるそうです。大麻はコーヒーより依存性が低いことが分かります。 世界薬物政策委員会(GCDP)のレポートもぜひご参照下さい。
NIDAの調査では、大麻使用者のうち9%が、人生のどこかの時点で依存症に陥るとの結果が出ています。その他は、アルコール15%、コカイン17%、ヘロイン23%、たばこ32%となっています。ただし大麻においては、10代の使用では依存性が17%にまで上昇します。
離脱症状(いわゆる禁断症状)もこれらの中で大麻が最も弱いと薬物乱用の専門家は評価しているそうです。
大麻の乱用・過剰摂取に伴う離脱症状としては、神経過敏、精神障害、睡眠障害、食欲低下、大麻の渇望、落ち着きの無さなどがあり、やめてから始めの1周間がピークで、2週間続くとNIDA(アメリカ国立薬物乱用研究所)はいいます。
参考記事: NIDA「Is Marijuana addictive?」 july 2020
たばこやお酒のように、嗜好用として用いられる大麻のことを指します。医師の処方は不要です。個人のQOL(生活の質)向上のために使用されます。
特定の疾患や症状の治療・緩和・改善を目的とした大麻のことを指します。医師の処方により使用します。
嗜好・医療大麻と区別するため、ヘンプと呼ばれたりします。国によって異なりますが、THC0.2~0.3%以下の大麻と規定されていたりします。繊維や建築などのために使用します。海外では自動車にも使用されています。世界では「バイオマス・プラスチック」という植物由来のプラスチックが、環境保護の観点で注目を集めています。その原料として、生育スピードの早い大麻が適しているのではないかと言われています。
一般に、身体の活動性を高め、陶酔感を生み出すといわれます。とりとめもないアイディアが浮かんでくることもあり、クリエイティブな活動に適しているそうです。使用後は「I'm high」と表現される方が多いそうです。
サティバよりTHC含有量が多く、CBD濃度も比較的高いです。リラックス効果と鎮静効果が高いといわれています。なので夕方から夜に使用するのが適しています。使用後は「I'm stoned」と表現されることが多いそうです。
インディカとサティバを混ぜ合わせたものです。比率は様々存在します。
BlueDreamzさんの説明がとても分かりやすいです。
大麻には「カンナビノイド」という医療効果をもたらす成分が含まれています。THC(テトラヒドロカンナビノール)、CBD(カンナビジオール)、CBN(カンナビノイド)などが明らかになっています(詳しくは次項カンナビノイドで説明)。
実は、これらのカンナビノイド様の化合物を、私達は日々体内で生産しています。これらをエンドカンナビノイド(内因性カンナビノイド)といいます。私達の身体は、エンドカンナビノイドを作り出したり、大麻由来のカンナビノイドを修理したりすることができるシステムを持っています。これが「エンドカンナビノイドシステム(ECS)です。
私達の身体にはホメオスタシスといって、心身・体調のバランスを整える働きが存在します。例えば、体内に細菌やウィルスが入れば、免疫が働き、身体を守ろうとしますし、ストレスがかかれば、それをどうにかしようと必要なホルモンを出してくれたりします。簡単に言うと、調子が悪くなったら、それを良くしようとする働きです。 実は、この働きの司令塔が、ECSなんです。
私達の身体にはCB1,CB2といったカンナビノイドを受けるための受容体が存在します。
CB1 | 中枢神経系、腺、結合組織、子宮、心血管系、消化管などに存在。中でも脳に多い。活性化されると痛みや不安が和らぎ、幸福感を感じる。 |
CB2 | 免疫細胞、消化管、抹消神経系などに多く存在。活性化されると、局所的に抗炎症作用がみられる。 |
私達の身体は、頭から足先、内臓の至るところでカンナビノイドを欲していることが分かります。カンナビノイドは私達の身体に必要不可欠です。 カンナビノイドが欠乏すると、様々な症状や病気を生じやすくなります。これをカンナビノイド欠乏症といい、イーサン・ルッソ医師が2004年に提唱した概念です。偏頭痛などの自己免疫疾患・繊維筋痛症・過敏性腸症候群などが、まさにこれに当てはまる可能性があるとされています。
このカンナビノイドを補う力を持つのが、”植物性カンナビノイド”。 つまり、大麻です。
実は、エンドカンナビノイドは脂肪酸から作られます。特に重要となるのが、魚類に含まれるオメガ3脂肪酸です。魚が身体にいい食べ物であることは周知のことかと思います。 つまり大麻は魚同様、身体に良いものであるといえますね。
このように私達の身体と大麻には、密接な関係にあります。
有名なのはTHC、CBDですね。他にもCBN(カンナビノール)、CBC(カンナビクロメン)、カンナビゲロール(CBG)など100種類を超えるカンナビノイドが大麻には含まれています。
精神活性作用があり、幸福感を呼び起こし、いわゆる「ハイ」な状態になります。 他にも一時的な記憶力の低下、時間間隔の変化、ふらつきなどみられます。 いわゆる大麻のネガティブなイメージを形成しているのがこの物質です。
しかしTHCも医療効果をもつ重要な物質です。
THCは痛覚知覚、気分、空腹感、筋肉の動きのコントロールなどに影響を及ぼし、医療効果を発揮してくれます。>
例えば、THCはがん患者の食欲を呼び起こしてくれます。抗がん剤治療に伴う吐き気を抑えてくれます。がん性疼痛を緩和してくれたりしてくれます。 さらにすごいことには、がん細胞を殺す・増殖を抑えるという研究結果も存在します。
健康面で注目されやすいのはCBDではありますが、CBD単体で摂取するのとTHCとともに摂取するのとでは、効果が大きく違います。様々なカンナビノイドを一緒に摂取すること(全草摂取)で、お互い相乗効果をもたらすことができます(アントラージュ効果)。
つまりTHCは一概に有害物質ではなく、むしろ有益な物質だといえるかもしれません。
精神作用がなく、日本においてもCBD製品が合法で流通しており、昨今ブームになりつつあるカンナビノイドです。
吐き気、けいれん、不安、不眠、炎症、神経変性などに対し医療効果をもたらします。にきびの改善もみられます。 まさに”医療大麻”と呼べるカンナビノイドです。
またCBDには、THCとりすぎによる不安の増強や物忘れを抑え込む力があります。
繰り返しにはなりますが、カンナビノイドは単体で摂取するのではなく、複数で摂取することでより大きな効果をもたらしてくれます。 なのでTHCやCBNも含まれる全草使用が望ましいです。
精神作用はなく、免疫抑制作用や抗炎症作用があります。 他にも主な効果として、睡眠の補助や鎮静作用があります。病院におけるあの厄介なMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を殺したとの研究もあります(THC、CBDでも同様だそうです)。乾癬などの皮膚疾患にも有効との研究結果もあります。 CBDと同様、近年研究が進められている成分です。近年の研究により、肝臓による代謝でよりよい効果があることもわかっているため、経口摂取が望ましいかもしれません。
心身ともにリラックスします。楽しい気分になり、音楽や絵画など芸術をみる感性が高まると言われます。精神的な抑制がなくなるためと言われます。一方で心拍数が上昇したり、のどが乾いたりします。
食べ物がやたら美味しく感じるようになります。 いわゆる「マンチー」という現象です。 食欲増進につながる作用ですね。
一時的に短期記憶が低下したりします。あくまで一時的なので、大麻の効果が薄れればすぐに回復します。
幻覚をみると言われますが、実際にはそのような話はあまり聞きません。 時間間隔が変わったり、感性が豊かになったり、マンチーになったりするという話がほとんどです。ただ、感性が高まるあまり、自分の内面に入り込み、その結果自殺や自殺未遂に至ったという話もあります。アメリカでも大麻と自殺の研究はされていますが、現時点では明らかなエビデンスが証明されていません。ただし、大麻の乱用と未成年での使用は、自殺や自傷行為と関連がある可能性があると考えられています。
また、大麻には致死量はないとされています。 摂取しすぎたり、体調や環境によっては、いわゆる「バッドトリップ」になることがあります(詳しくは後述)。
大麻は様々な症状、疾患に対し医療効果をもたらします。代表的なものを紹介していきます。
人間、誰しも調子の悪い日はあります。大きな病気にかかっていなかったとしても、大麻は以下の場面で活躍することが見込まれます。
食欲が出ない時におすすめです。THCには食欲を増長させる作用があります。いわゆるマンチー状態です。
逆に食べすぎてしまうようであれば、THCなしでCBDを摂取することをおすすめします。CBDは逆に食欲を抑え、また脂質を分解する作用があります。
依存症のところでも説明した通り、禁煙においてある程度の効果が得られています。ニコチンを欲するイライラ感を軽減してくれるでしょう。
翌日に何か重大なイベントがあって眠れない!ってときに奏功します。プレゼンをする前などにCBDを摂取すると、リラックスして臨めそうですね。
乗り物酔いする人にはありがたいですね。
偏頭痛持ちには強い味方になります。生理痛にも高い効果が得られると思います。慢性的に腰痛や肩こりがある人にもおすすめです。
免疫システムに働くエンドカンナビノイドが足りている状態であるので、予防医療として活躍することが期待されます。新型コロナウイルスの罹患率が減少するとの論文も発表されています。
前述した通り、CBDにはにきびに対する治療・予防効果があります。
THCによる精神活性により、五感が冴え渡り、音楽やアートに対して覚える感動が大きくなります。
以下のような方法があります。摂取方法により、効果の発現時間と持続時間が異なります。日本ではCBDは合法とされており、様々な製品が流通しています。CBD製品を使用する際などに参考にして下さい。
不慣れな人が大麻(特にTHC)を過剰摂取することでよく起こる現象です。強烈に不安感がつのり、ひどいと「自分は死ぬんじゃないか」と思うほどパニックに陥る人もいるそうです。ひどく嘔気を伴う人もいます。大麻の摂取に慣れてくると、あまりみられなくなります。心配事がある時や、不慣れな環境で使用する時も、バッドに入りやすいと言われます。
初めての場合は、経験者と使用するのがいいです。慣れている場所で、なじみのある人と使用すると、安心してバッドに入りにくくなります。また、はじめはどれくらい使用すればいいのかもよくわからないかと思います。少量ずつの使用するのがベストですが、やはり先輩と使用するのが望ましいと言えます。
※ただし、日本では違法です!
それでもバッドに入ってしまった時は、冷たい水を飲む、冷たい水で顔を洗う、おいしいものを食べる、歌を歌うなどすると良いといいます。あとは寝ることが最大の回復方法です。バッドに入っても、休めば必ずもとに戻るので安心して下さい。
ただしバッドトリップは悪いことばかりでなく、後から振り返ると、気付きや学びのきっかけになったとポジティブな表現をする人が多いみたいです。
CUD(Cannabis Use Disorder)とは、大麻使用により悪影響を受けている状態を指し、「アメリカ精神医学会の精神障害の診断及び統計マニュアル 第5版(DMS-5)」に病名として規定されています。悪影響としては、主に乱用や依存が挙げれます。
具体的な症状としては
が挙げられ、これらのうち2,3個以上当てはまるとCUDの診断となります。
NIDA(アメリカ国立薬物乱用研究所)によると、2015年にはCUDの診断基準を満たした人は約400万人で、これは大麻ユーザーの約30%にあたります。特に18歳以下で大麻を使用すると、成人の約4~7倍の発症率となるそうです。
ただこれについては、THCの含有量の変化と関連があると考えられてもいます。1990年代初頭はTHCの平均含有量は4%未満だったのに対し、2018年には15%以上まで上昇しています。
以上のことから、大麻使用の際には摂取する量(特にTHC)に対する十分な配慮が必要であり、20歳以下では使用を禁止することが望ましいと考えられます。
参考記事